ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





恥ずかしい思いをさせて?

ダサい彼氏で?
格好わるい彼氏で?


そんなものに対する「ごめん」じゃないことだけは、わかってしまう。



「ここなら人が来ないと思うから」



たどり着いた場所は生物準備室。

文化祭だとしても必ず定位置で出迎えてくれる、人体模型。



「浅倉くんは上地先生から許可を取ってるの…?」


「うん。そう」



担任の上地先生は生物担当だから、この場所に出入りできる教師のひとり。

きっと彼からカギを借りたんだろうと、ずっと思っていた。


ふたりだけになると、先ほどまで抱えていた不安がスーっと少しずつ身体から抜けていく。



「すごいね、なかなか貸してくれなさそうなのに。とくにここは大事な資料とかありそうだから…」


「…俺は特別なんだ」


「とくべつ…?あっ、それよりさっき転んだところは大丈夫…!?」


「平気だよ」



立ち話が始まってしまう前に、とりあえず座らせる。

見る限りではかすり傷もしていないようで、ホッと胸を撫で下ろした。