ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





「わ…っ!!浅倉くん…!?」



ガクンッと、勢いよく手が引かれたと思えば。

気づいたときには何かに躓(つまず)くように膝を倒してしまっている浅倉くんがいて。


私と手を繋いでいたからギリギリ膝をつく程度で済んだけれど、そうじゃなかったら確実に彼は転倒していた。

急なことだったから私も助けてあげることができなくて、まさかここで転ぶなんて思ってもみなくて。


だって……ここは段差も何もない廊下だよ。



「きゃははっ!さっきのイケメン転んでるし!」


「ダッサー!かっこわる~!」



うるさい、黙って。

笑い事じゃないの分かるでしょ。

もし冗談でやっていたら、本人はこんなにも青白い顔をして震えてなんかない。


ここは何もない場所、躓いたわけでもなかった。



「浅倉くん大丈夫…!?」


「…ごめん、平気」



こんなにたくさんの人で溢れているのに、みんなそこまで気にしない。

ただ転んでしまった、それだけ。



「救急車…っ、救急車呼ばなきゃ…!!」


「青石さん、…転んだだけだよ俺」


「で、でも…!なんか……変、だったよ、」