「高校1年のときの文化祭での貸し、まさか忘れたわけじゃねーよな?…それ、そろそろ返して欲しいんだわ」
やさしくやさしく、投げかけてくる。
最愛の彼がこの世を旅立ったあと、私に1通の手紙が渡された。
そこに書かれていた後半の内容だけは当時の私にはよく理解ができないもので。
そんな人はいないと、現れるはずがないと、いなくていいと、そのときの私は思っていた。
でも今になって、ようやく分かった気がする。
『青石さんは俺の彼女』
『ごめんね北條くん!この借りはまた10年後に返すからっ!!』
『おせーわ!!』
唇が、ふるえる。
ひとつひとつ、瞳から流れ落ちてゆく。
私の涙をそっと拭った北條くんの瞳の奥、いちばんの男の子も微笑んでくれているように見えて。
「“いちばん”じゃなくていい。ただ俺は、お前がこの先の人生で泣いて笑って帰ってきたとき…、
ずっと“おかえり”って言ってやれる存在になれればいいんだ」
私はきっと、この日を待っていた。
彼も認めた、2番目の王子様が現れる日を。
「10年、待ったぞ俺。10年待って、それでやっと……あいつの次で、2番目でもいいって、
───そんな自分の気持ちに妥協したいと思えるようになった」



