「そんな北條くんは…?」
「俺?…まあ…、何人かとは付き合った」
「えっ、そうなの…!?」
「そりゃな、26だぞ。大学にも行ったし、それなりに経験はした」
高校を卒業して、お互い別々の大学へ行っても連絡はたまに取り合っていた。
この町は栄えた中心部まで電車で通える距離の住みやすい町。
そのため職場が近いこともあって、社会人になってから交流がまた増えた。
「だから、それで納得できる気持ちだったらとっくに結婚してんだよな俺。…つっても、もう3年近くはいねえけど」
ここにきて過去の恋愛事情を少しだけ教えてくれた北條くんは、柔らかくこぼす。
「…俺さあ、お前と浅倉みたいになりたかったんだよずっと」
彼は、私以外に千隼くんの病気を知っていた唯一のクラスメイト。
いつも屈託ない明るさと表裏のない人柄で私たちを助けてくれた。
そんな北條くんから見た私と千隼くんは、どんなふうに映っていたんだろう。
「なんだろな、言葉にならねーの。“幸せ”っつう言葉の具現化?擬人化?そんな感じ」
そう言われて、過去の気持ちが甦ってくる。
特別なものはいらないと。
ふたりで手を繋いでさえいれば、それだけで幸せなんだと。
まだ高校生だったね、私たち。



