短大の頃はもちろん、そんなこと考えもしなかった。
でも20歳を過ぎて社会に出ると、またそこでいろんな出会いがあって。
もしかしてこのまま付き合っちゃうのかな……なんて思う存在は、いなかったわけではなくて。
でもやっぱり駄目だった。
その人に対して自分の気持ちに妥協したいと思うことが、できなかった。
「…難しいよ、こればっかりは」
「それは…浅倉に対して後ろめたさがあるからか?」
「…ううん、そうでもなくて。むしろその理由で私がずっと独り身だったら…、いつか千隼くんにまた会えたとき怒られちゃいそう」
なにしてるの李衣、って。
彼は意外と心配性なところがあるから。
想像して眉が下がった私に「…そうかもな」と、どこか優しい顔をした運転手さん。
「昔の俺はそれも別にナシじゃねえだろって思ってたけど、今は浅倉と考えることは同じだよ」
8年、もう8年が経ったんだ。
私の人生が変わった16歳からは、10年が経った。
でもそれを言ったら北條くんこそ、あなたの恋愛事情は謎すぎてよく分からない。
それは高校のときからだ。
モテるはずなのに付き合ったりはしていなくて、告白も蹴っていたっぽくて。



