どうしようもない何かを責めて、私は、私たちは、そうやって生きていたね。
『目の前に……、ずっと、夢みた世界が…あって…、おれが伸ばせない手を……きみが、伸ばしてくれて…、』
『これのどこが───…“幸せじゃない”なんて、言えるんだ』
『あり…が…とう、……ありが、とう…っ、
─────…李衣……っ』
だけど不思議なんだ。
君と手を繋いでいる思い出だけは、どうしたって最後は笑顔なの。
『俺も李衣だけが大好きだ』
───…行けたよ、千隼くん。
君が夢みた、世界に。
私たちが夢みた、世界に。
千隼くん、ここは君が夢みた、ふたりだけの世界だよ。
「千隼くん───!」
そして、彼は、振り返る。
私がここにいることを最初から分かっていたかのように、振り返る。
大好きなひと、愛しいひと、私のいちばんを捧げたひと。
どこまでも強く、格好いい、私にとっていちばんの王子様。
“─────李衣。”
穏やかな顔をして、私の名前を呼んで。
無邪気に、屈託のない、とびきりの笑顔を見せて。



