淡い花びらたちに包まれて、手足を自由に動かして。
落ちてくるひとつひとつをかわすように飛び跳ねて、子供のように桜と遊んでいる、大好きな男の子。
「…あさ、くら…?浅倉…、っ、浅倉…!!」
ガタガタッと忙しく席を立った北條くんは私の横に並ぶと、同じように桜の先をまっすぐ捉える。
「青石…、浅倉が……いる、のか…?」
「…いる、…千隼くんが……いる」
3年3組の生徒たちは次から次に窓際へ移動して肩を並べた。
私の震える背中を支えてくれる楓花。
「青石…、あいつはっ、浅倉は……なに、してる…?」
「…走って、跳ねて、…わらってる」
「っ…、浅倉…!!!」
これは神様のイタズラか、気まぐれな優しさか。
けれど見えている。
私には、幻のような桜と千隼くんの姿が。
ぐーっと伸びをひとつして、太陽の光を浴びて、気持ちよさそうに自分の身体を動かして。
「よかっ、た……っ、」
歩けた、走れた、よかった、よかった。
目に映すたびに、心が震える。



