「本当は浅倉も一緒に、ここで卒業したかったが…それでも北條、お前が浅倉でもある。だから全員揃っての卒業だな!」
無理やりにでも笑った先生は涙目。
北條くんは静かにうなずいて、誰も座っていない窓際の机へ視線を移した。
「俺は教師をしていて、この瞬間がいちばん好きでもあって嫌いなんだ」
最後のホームルーム。
先生は何を卒業生に伝えるんだろうと、誰もが注目していた。
「嬉しさよりも寂しさのほうがでかいからな。生意気だったガキどもが、いつの間にか立派になったところを実感させられる」
その眼差しは弟や妹というよりは、自分の子供を見つめているみたいだった。
どんなときも強引にしてまで生徒たちを引っ張っては、それでいて恨めない上地先生らしい言葉。
「悪いがこのクラスを初めて見たとき、俺は直感で“嫌い”だと思った」
「はあ!?卒業式だぞ先生!!いま言うか!?」
「そーだそーだ!最後くらい褒め称えろって…!」
本当に今日で卒業なんだと思うと、胸にじんわり広がる期待と不安。
ここからそれぞれの道へと進む分岐点。
卒業は別れだけじゃなく、新しい出会いを作るための後押しなのだと。



