ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





「とっくに本人さんからも言われてる」



無邪気に得意げに、歯を見せて笑った北條くん。



「よし、んじゃあ行くか卒業式!あ、濁点だらけの合唱はやめろよ青石」


「そんなこと言ってる北條くんのほうが大泣きしちゃったりして」


「ナメんな。ハンカチも2枚持参してんだよこっちは」


「…ふふっ」



部活動に専念した生徒、テストで学年上位を維持しつづけた生徒、甘酸っぱい恋を経験した生徒。

卒業生たちは、みんなそれぞれ胸に秘めた思い出がたくさんあると思う。


だけど私は、それまで想像もできなかった現実を前にして、たくさん泣いて、たくさん迷って、悩んで。


時には誰かを責めて、自分を責めて。

そして、大きな愛を知って。


自惚れているくらい、私の高校生活は誰にも負けないものだと自信を持って言える。



「みんな卒業おめでとう。じゃあ3年3組、最後のホームルームを始めるぞ!」



体育館から教室に戻ると、「ぜったい泣かねえ」と豪語していたクラスメイトほど涙を見せていた。


いつかに千隼くんと一緒に見た川のよう。
太陽が反射した水面。

そんなキラキラした世界のなか、私たちは教卓の前に立った上地先生を見つめる。