ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





ドアの前、コサージュを2つ付けた卒業生がひとり。

それでも彼は中に入ろうとはせず、私に優しく声をかけてきた。



「それ…目立つよやっぱり」


「ははっ、最高だろ?」



もうすぐ始まる卒業式。

私を呼びに来たはずなのに、北條くんは落ち着きながらも真剣な顔をして口を開いた。



「浅倉は今も生きてる。いつどうなるか分からない危ない状況かもしれねえけど…生きてんだよ」


「…うん」


「なんつーか…、俺は単純に浅倉のことが好きだ」



北條くんらしい。

そこにぜんぶが詰まっているくらい、北條くんらしい。


きっと彼にも届いているはずだ。


千隼くんがクラスメイトにあそこまで心を開いたのは、私以外では北條くんだけだと思うから。



「…北條くん」


「ん?どした?」


「千隼くんの代わりに言っておこうと思って。…本当にありがとう」



彼は北條くんに対してちょっとだけ生意気で、つれない反応ばかりだったけれど。

いつもいつも、本当はすごく感謝していたと思うんだ。


北條くんが病室に来てくれるたびに千隼くんは嬉しそうな表情をしていたこと。

その小さな変化は伝わっていないと思っていたのに。