桜のつぼみが膨らんで、花開くには残り数日というところで迎えた卒業式。
そこだけがもの寂しい気持ちにもなったが、雲ひとつない青空に恵まれて。
「お前なんでコサージュ2つも付けてんだよ拓海!」
「浅倉のに決まってんだろ。あいつも俺たちと一緒に卒業すんだよ」
「だとしても、それするなら青石じゃね?」
「バーカ。ここは親友の俺だ」
北條くんの左胸にふたつ。
特別な今日には違和感も消えてしまう。
本当は、今日の卒業式は欠席しようと思っていた。
あれから様態が安定せず、いつ呼吸が止まってしまうかもおかしくない状況のなかで。
彼に残された時間は残りわずかだとも言われていた。
けれど「千隼は青石さんと同じ世界を見ているから、それこそ青石さんには卒業式に行ってもらわなくちゃ」と。
千隼もきっとそう思っているはずよ───そう背中を押してくれたのは、彼のお母さんとお父さんだった。
「千隼くん、ここに来るのもとうとう今日が最後になっちゃった」
迎え入れてくれる、人体模型。
私たちしか入れなかった場所。
ここに入ってしまえば、いつだってふたりだけの世界だったね。



