ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





じゃあこの涙は、未練や後悔、悲しみからくるものですか───と。


誰かが問いかけてきたならば。

俺は眉を寄せて、首を横に振るだろう。



『俺、やっぱり幸せだよ。誰がなんと言おうと……幸せなんだ』



ごめん李衣。

あんなにたくさんの幸せを与えてくれたのに、まだそれ以上を望むなんて、どれだけ貪欲なんだって。

そんなふうに思うかもしれないけど。


でも、俺と同じくらい君のことを想っている男がもう1人いる。

そいつにだけ俺は託したんだ。


だとしても俺は李衣のラッキーセブンの王子様で、いちばんには変わりないから。


だから、李衣。


君は、俺たちが毎日を一緒に生きた世界で、君らしくこれからも笑って生きてほしい。




『李衣、───…俺と…、結婚、しよう』




どうか神様。

俺の人生を、“可哀想”だとは言ってやらないでください。


つらいことばかりでした。
苦しいことばかりでした。


だけど俺は、紛れもなく幸せだったんだ。




『今日は…今まででいちばんのラッキーセブンだね、千隼くん…っ』




ここは俺が夢みた、もうひとつの世界。


ずっと言いたかった言葉を贈って、止めどない涙を流して。

大好きな笑顔を最期まで“浅倉 千隼”という存在として生きた記憶に焼き付けて。


愛しい腕に包まれるように俺はうなずいて、ゆっくりと穏やかに目を閉じた─────……。