『おれは…、本当の俺は、……病気なんだ』
『え…?』
『足も腕も動かせない、病気なんだよ。それで合併症を引き起こして……、
今の、君の目の前にいる、この26歳の俺には…なれないんだ』
本当の俺は、向こうの世界の君を、18歳の君を、泣かせてばかりの最低な男なんだよ。
今みたいに強く強く抱きしめてあげることすらできない情けない男だ。
『千隼くん』
『っ…』
そっと、唇が優しく塞がれた。
俺はやっぱりどこに行ったって李衣から与えてもらって、『俺からじゃなくてごめん』って同じ言葉を言うらしい。
『でも、この世界で会えた。ここで私は、26歳の千隼くんに会えて…、26歳の私をあなたに見てもらうことができた』
『……っ』
『これのどこが…“幸せじゃない”なんて、言えるの…?』
俺が恋をした女の子は、人生で最初で最期の恋をした女の子は。
俺には勿体ないと謙遜(けんそん)してしまいたくなるほど、だけど誰にも渡したくないと強欲にさせてくるほど。
こんなにも、こんなにも、美しいひと。
『私はどんな千隼くんを見たって嫌わないし、どんな世界に生きる千隼くんも大好きだよ』
『…李衣、りい、…李衣、』
『はい…!わたし李衣っ』
思わず泣きながら笑ってしまった。
北條にはあんなふうに強がったけど、本当はこんな“夢”を誰よりも望んでいたのは俺なんだよ。



