何かを期待している目は、すぐに俺のほうへ寄ってくる。
そっと抱き寄せてみると、変わらない李衣のぬくもりと匂いに、俺は彼女の首筋に顔を埋めた。
抱きしめてあげることができる。
ずっと、ずっと、俺の手を握ってくれる李衣に、俺はこうしてあげたかった。
『…李衣、……愛してるよ』
『わ、私も…』
もう今日で、この夢を見ることはないんだろう。
最後だ。
本当の、ほんとうに、最期。
俺の命の火も、ゆっくりゆっくりと今、静かに消えようとしているから。
『これからも俺と…ずっと手、繋いでくれる?』
『えっ、当たり前だよ…!』
『…俺のこと、すき?』
『大好きに決まってる…!千隼くんは私にとって、ずっとずっといちばんだから』
やっぱり俺の大好きな女の子だと思った瞬間、ポタリポタリと溢れては落ちてゆく大粒の涙。
驚いている李衣は、保育士にしては慣れていない動きで俺の頬に手を伸ばした。
『うそっ、もしかしてそんなに嫌だったりする…?』
玄関を開けると迎え入れてくれる笑顔、温かい手料理、ソファーのうえに畳まれた洗濯物。
キッチンには食器が2つずつ、洗面所へ向かえば歯ブラシが2つ。
ああ、こんなの……ズルすぎるよなあ。



