『カブトムシや蝶々を見つけるのが得意だったりして。でも可愛いのはね、ぜったい最後は逃がすの』
『…なんでだろ』
『好きに動けないのは苦しいから、だって。5歳でそんなこと考えられるってすごいよね』
もし俺が、本当の俺は、好きに動けなくなる病気なんだよって。
そんなことを言ったとしたら、目の前にいる彼女はどんな反応をするだろう。
『……その子、たぶん俺の生まれ変わりだ』
『生まれ変わり…?え~、千隼くんはここにいるのに?』
『…そう』
俺はカブトムシにも蝶々にも、いろんなものになって李衣を見守ってる。
その“千明くん”という存在になってまで。
どこかにそんな世界もあるのなら、俺は懸けたいと思った。
『千隼くん』
大人の女性になった君に名前を呼ばれることが、まだ少しだけこっ恥ずかしい。
初めて見たとき、俺はろくに目も合わせられなかった。
『えっと、私たち…もう、26歳だね。出会って10年が経ったみたい…』
26……か。
きっとそのとき、本当の俺はもう居ない。



