そんな彼女は保育士をしている。
こうして向かいあっては俺たちの高校時代の話に、保育園での相談事、担当している子供たちのことだったり。
楽しそうに話す李衣を前にして食べる夕飯は、幸せという言葉以外に表現できるものは無かった。
『それで千明(ちあき)くんっていう、いつも私の隣を陣取ってる子がいるんだけどね?』
『うん』
『…ふふっ』
何度も何度も見る夢だから、さすがに慣れてしまう。
この夢を見れたときは“やった”なんて思うようにもなって、今日はどんな彼女に会えるだろうかと楽しみだった。
ほとんど寝たきりだった俺の、ほんのわずかなひととき。
『その千明くん?が、どうかしたの』
『んーん、誰かさんに似てるなあって。“りいせんせいはおれの”って言って、いつも私の手を離さなくって』
『…李衣は俺のでしょ』
『あははっ、ほらね?』
足が動く、腕も動く。
見てられないくらい細くないし、やつれてもいなくて、細かい作業だって簡単にこなしてしまえる。
きっとここは、俺が病気にならなかった世界だ。
そして俺が李衣に与えてあげることができない未来なんだ。



