「俺は…、おれ、たちは……行けた…んだ…、李衣が……ほんとう…、に、…俺を……そこへ……、連れていって…くれた……っ」
「おはよう」と言うと、当たり前のように「おはよう」が返ってくる。
些細なことで笑って、今日あった珍しい出来事を自慢げに話して。
今日の空のお話、道端で出会った野良猫のお話、新しくできたパン屋さんのお話。
お互いの好きなところ、尊敬しているところ、くすっと笑えてしまう武勇伝。
私たちが出会った教室、町、世界、ぜんぶを一緒に見ながら。
すべてが愛しく思えたら、どちらからともなくぎゅっと抱きしめあうの。
「千隼くん……そこは…、増悪がない世界だった……?」
「……なかった……、おれ、病気を…恨むこと、すら……考えて…、なかった…よ、」
増悪がない世界に行きたい───それが、彼が夢みていた世界だった。
そこはどんなものも恨まなくていい世界。
「李衣と、いると…、こころが、満たされるんだ……、病気に…すら、ありがとうって………おもえた…、」
「っ…、」
君に出会って、かけがえのない時間を知ることができた。
ひとつひとつの奇跡を見つめて、小さなことも宝物なんだって。



