行けた……?
そんなはずない、行けてなんかない。
だって君が夢みる世界は増悪がない世界だ。
私が想像もできないような、もっともっと高い場所にあって、喜びと安堵、優しさに包まれた世界のはず。
『すごいな…。俺、ほんとに行けたんだ』
『だって俺……、夢が目に見えて掴めることを知ったから』
『実を言うとそれはもう叶ってる』
なにを言ってるんだろうって、本当はいつも理解ができていなかった。
不安に思う私とは反対に、千隼くんは決まって心から満足そうに言い切ってしまうから。
考えて、考えるの私。
そのとき彼はいつも、なにを見ていた?
きれいな景色?大きな空?賑やかな町?
「────……あ、」
千隼くん。
私が間違っていたかもしれない。
もしかすると私はずっとずっと、大きな勘違いをしていたかもしれない。
君が夢みた、ふたりだけの世界は。
実はこんなにも近くにあったんじゃないかって。
君がいつも見つめていたのは、景色や空、町の前に。
いつも、ずっと、毎日。
─────私を、見ていた。



