「お姉ちゃん、ありがとう」
「…なんのこと?」
「お母さんとお父さんに説明してくれたの、たぶん叔父さんとお姉ちゃんだよね」
放課後は必ず病院へ向かって、休日も朝から家を出る。
そんな娘を不審に思うことは当たり前で、だけどお父さんもお母さんも詳しく問い詰めてきたことは1度もなかった。
それは、私の代わりに言ってくれた存在があったからなのだろう。
なんとなく分かってしまうくらい、お父さんもお母さんも私の精神面を陰からサポートしてくれていたから。
「お姉ちゃんにはいっぱい助けてもらってる。…千隼くんも、きっと喜んでるよ」
「…だったら尚更よ。あたし達は、あんたと浅倉くんがふたりで過ごせる時間を……1秒でも多く作ってあげたいだけ」
この赤信号を左折すれば、高速道路のインターチェンジへ続く国道に出る。
そのまま道なりへまっすぐまっすぐ進むと、だんだん見えてくる大学病院。
日本で5本の指に入ると言われているひとつだ。
『浅倉くんの様態が急変して、1時間前から意識不明なんだ。今はなんとか落ち着いているが…、ただ、体力も呼吸も弱っている』