ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





「俺は、しあわせだ、…幸せ、なんだよ」



何度も何度も、“幸せだ”と、繰り返す。

その度に私から落ちる涙が、彼の微笑みを誘った。



「ここに……李衣が…いてくれる、それでもう……いいんだよ俺、」



ちがう。

千隼くんが夢みた世界は、もっともっと幸せで温かい場所。


こんなにも不自由で、こんなにも寂しい場所じゃなく、笑顔が耐えなくて優しい世界のはずなのだから。



「こんな姿に…なっても……変わらず…手、繋いでくれてる……、それだけで…いいんだ」


「いいはずない…、私は、わたしは…っ、なにもしてあげられなかった……っ」



いつも助けられて、いつも夢を与えられていたのは私だった。


入学したばかりの数学に、サッカーボールが顔面に当たったとき、北條くんが作った雪だるまを唯一“かわいい”と言ってくれたのも。

体育祭でのお姫様抱っこだって。



「ぅぅ…っ、うぅっ…、ごめんね千隼くん、ごめん、ごめんなさい……っ」



SMA、合併症、急性呼吸器感染症、肺炎。


少し前まではSMAだけだった情報が、今では新たにいくつも増えてしまった。

数日前までは車椅子だけだったのに、今では人工呼吸器と点滴が取り付けられてしまった。