このとき私は、“自分だけ”ではないのだという実感もしてしまった。
医者という立場だからこそ、普通の人が見えないものも見えている彼は。
もしかすると患者や親族以上の現実を目にしてきているのかもしれない。
「じゃあ…なに、千隼くんは今の時代では救えないけど……、この歴史がいつかの未来で役立つって言うの…?」
「そうは言ってない」
「私たちはそのための繋ぎになれって、踏み台になれって、そう言いたいの…!?」
「ちがう」
わかってる、わかってるってば。
あなたが私に伝えたかったことも分かってるんだよ。
わかってるけど、わかりたくないの。
だって分かってしまったら、もうそれは諦めるってことでしょ…?
「頼るあてはもう……、先生しかいないんだって…っ」
ガクンっと、全身が脱力して床に膝をついてまでも願った。
「私たちはただ…っ、ただっ、ずっと一緒にいたいだけなんだってば……っ」
それだけなの。
特別なものなんかいらない。
遊園地に水族館、写真映えするスポット、そんなものひとつだって欲しくない。
ただずっと、ずっと、ふたりで手を繋いでいたいだけなんだよ。
一昨年のイルミネーションみたいなものだ。
キラキラ輝くイルミネーションよりも、道を外れた2人だけの時間。
私たちはそんな、たったそれだけの、ふたりだけの世界で笑いあっていたいだけなのに。



