「おまえ、いつもこんなとこで泣いてたのかよ」
「だってここは…千隼くんとの大切な場所だから…、」
「…なら、俺はこれ以上は入らないようにするわ」
「あいつにどつかれそう」とつぶやきながら、その場にスッとしゃがんだ北條くん。
せめて目線だけは合わせてくれたみたいだったが、彼がどんな顔をしているかは分からない。
「…俺、浅倉と似た症状を持った人を見たことがあるんだ」
バッと、思わず顔を上げてしまう。
「完全に同じかは分かんねえけど、…あいつが病気だってことは俺も知ってる」
彼は泣きそうに微笑んでいた。
どうしたらいいか分からない。
なにも、なにも、できない。
苦しんで、弱って、細くなって、それでも私が顔を出せば笑顔を向けてくれる大好きな人を見ていることしかできない。
「その人は……どうなったの…?」
生きてる?
ねえ、生きてるでしょ…?
大丈夫だよね……?
きっと、きっと治るんだよね…?
「……、」
言葉が止まってしまった北條くん。
今の私には聞かせないほうがいいと判断したのか、その先を言おうとはしなかった。
バカだよ北條くん。
そんなの、そんな反応のほうが認めてるってことだ。



