机を強く叩いてまで騒ぎを鎮(しず)めたのは、北條 拓海だった。
いつもの賑やかさはどこへ行ったんだと思うくらい、彼にしては真面目な顔をしていて。
これは笑い事ではないのだと察したクラスメイトたちに余計どよめきを作った。
「でもよ拓海、お前も気になるだろ…?」
「そういやお前よく浅倉を庇ってたもんな。お前こそ何か知ってんじゃねーの…?」
疑いの眼差しを向けられたとしても表情を変えない北條くんは、小さく口を開いた。
「もしそうだとしても違くても、浅倉が知って欲しいって俺らに思ってたならとっくに話されてるだろ。
だけどそうじゃない。…それを分かれよ」
彼は話したいと思った人間にだけは、本当のことを話してくれている。
そんな人間に選ばれたのは、私が知る限りでは私だけだ。
「ってことは、やっぱりヤバい病気ってことか…?」
「2度と歩けないとかじゃねぇよな…?」
北條くんはそれ以上を答えようとしなかった。
彼がどこまで知っているのか、私は分かっていない。
いつも千隼くんをサポートしてくれたから、もしかすると私が知らないだけで病気のことを知っているのかもしれない。



