ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





それを知ってどうするの。

それを知れば、みんなが彼の病気を救うことができるっていうの?

家にも友達にも、周りに言いつけては新しい話題づくりに使うだけでしょ?


イライラと、悲しみと、どうにもできない感情が私の心を塗りつぶしていく。



「隣のクラスの奴がさ、浅倉が大学病院にいるとこ見たって言ってたんだけど!」


「えっ、そうなの…?大学病院って…なんで?」


「知らねーけど、でもまだ車椅子だったっぽいし。つーか青石!お前は知ってんだろ!」



知ってるよ。

今も彼は誰よりも頑張って、一生懸命、自分の身体と向き合って毎日を精いっぱい生きている。



「教えろよ青石!包帯巻いてたときも骨折したときも、おまえ本当はぜんぶ知ってたんだろ!!」


「李衣、浅倉はどうなってるの…?病気なんかじゃないよね?ねえ李衣!」



男子も女子も一斉に私へとぶつけてくる。


いつもの私ならばうまく誤魔化してかわすことができていたかもしれないけれど、数日前から私自身の調子も良くなかった。

今も油断してしまったら切れてしまいそうで、それはもう必死に繋いでいるのだ。



「おいっ!聞いてんのかよあおい───」



バン───ッ!!!


とつぜん響いた音に、全員の肩がビクッと跳ね上がった。



「やめろ。そんなのしてどーすんだよ」