ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





「さすがにおかしくない?」



ことの発端は、クラスメイトの誰かがつぶやいた一言だった。

最後の体育祭が終わって、最後の夏休みが訪れる手前。


まるでそれは「せっかく隣の席になれたのに」と、ずっと空席のままの机に文句を言っているみたいだった。



「いつもお母さんが迎えに来てたじゃん。よくよく考えるとさ、それもなんか変じゃない?」


「ね、みんな口には出せないだけで思ってるよね。最後に見たときなんか、めちゃくちゃ痩せてたし」


「もしかして……病気、とか?」



私は進学へと向けて動く毎日。

早くて8月からAO入試が始まるため、面接対策や情報集め、この夏休みで固めようと。

受験生ならばごく一般的とも言える高校3年生を過ごしていた。


けれどさすがに、ピタリと動きは止まってしまう。



「なあ先生!浅倉はいつになったら学校来るんだよ!」


「つーか、どこの病院に入院してんの?なんで入院してんの?ただの骨折だったはずだろ?」


「教えてくれよ先生!いろいろ謎すぎんだろ!!」



放課後のホームルーム。

女の子たちの噂話が、とうとうクラスの問題となって担任へと向かってしまった。