入学してから1週間は名簿順の席だったから、私のうしろは千隼くんだった。
すごく格好いい男の子がうしろにいる……!なんて、毎日ドキドキして。
頭も良くてクールで、女の子たちから密かに騒がれてたりもして。
少女マンガに出てくるヒーローを実写化したら彼なんだろうなって、私はいつも思ってた。
「覚えてる?数学で私がランダムに当てられちゃったとき、千隼くん教えてくれたよね」
「だって逆に見てられなかったし」
「うっ…、ああいうの、昔からぜったい当てられるタイプなんだぁ私」
「うん、なんか分かる」
初めての数学の授業のときだったかな。
親睦を深めるとかどうとか適当なことを言ってきて。
先生が出した問題の穴埋めをランダムで当ててくるという、なんとも悪趣味なことをしてきた数学担当。
『…二分のルート3』
ボソッと、それは独り言を落とすように、前の席の私にしか聞こえないくらいの音量で。
だから私も最初、浅倉くんの独り言かな…?なんて思った。
だけど一か八かに懸けて同じように先生に伝えてみると、まさかの大正解。



