「ペアブレスレットなの!この部分だけ磁石になっててね、千隼くんのと合わせることができるんだ~」
「へえ~、オシャレ~」
「でしょっ」
本当はブレスレットではなく、私が目に入ったものはペアリングだった。
もちろん彼さえ良ければ私はそっちをお揃いにする気だったし、未来の想像もしてしまっていた。
けれど「こっちのほうが李衣に似合ってる」なんて、切ない顔で言われてしまっては。
そのあと隠れた路地裏で抱きしめられて、許してしまった。
「やっぱ海見えないし…。そこだけが惜しいとこよねー」
窓際に立って夜景を眺めた楓花は、惜しいと言いながらも満足そうだった。
私たちの部屋はちょうど角部屋で、窓が他の部屋とは違う場所に取り付けられていた。
そのため景色を覗いても、目の前は向かい側にあるホテル。
───ピロンッ。
ベッドでゴロゴロしながら明日の予定確認をしていた21時半過ぎ、スマートフォンが光った。
《あとで部屋、出てこれる?22時35分に4階の自動販売機前に集合》