「李衣、」
「千隼くんっ」
何度、何回、名前を呼ばれたって。
何度、何回、同じシチュエーションを過ごしていたって。
まるでその度にいちばん最初で初めてというように、私たちはお互いを見つめあう。
「ごめん、待たせて」
「ううん!もう用事は終わったの?」
「うん」
「じゃあ帰ろっか!千隼くんのお母さんはもう駅で待ってるかな…?」
お祭りの帰り道に似た、ちょっとだけ寂しい雰囲気。
寂しいのに温かくもあって、どこかドキドキもして、まだ終わってないねって期待してしまうような。
体育祭あと、誰もいない教室で待っていた私のもとへ千隼くんは戻ってきてくれる。
「李衣、夕焼けが綺麗だよ」
席を立ってリュックを手にした私は、背負いつつも彼の声に耳をすませる。
まだもう少し帰る気はないみたいで、窓際に寄って振り返った千隼くん。
「今日は赤色だね。前はオレンジだった」
「李衣はどっちが好き?」
「私は…、へへ、千隼くんと見るものならぜんぶ好き!」
「……俺も」
赤という色は、ドキリとする。
その燃えるような赤に、どこか意識ごと吸い込まれてしまいそうだ。



