ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





「…だとしても、別に俺がその人と同じ病気だとは限らないから」


「俺だって違うって思いてえわ。けど浅倉、」



おまえも病気のこと自体は否定しないんだな───。


やられた、と思ったし、やってしまった、とも思った。

いつも賑やかで俺とは正反対の性格をしているクラスメイトとは思えない鋭さが、そこにはあった。



「……だから俺に李衣を譲ったの、」


「ははっ、だとしたらかなり自意識過剰すぎじゃねえ?俺もお前も」



たぶんこいつは、すごく、かなり、単純に良いやつなんだろう。

北條の世界にも増悪がないように俺の目には見えて、だから病気を否定する気にもなれなくて。



「青石にとっていちばんはお前、浅倉ってだけ。んで、お前も青石のことが好き。
そこに俺が入ってどうなるんだ、なにができんだよ。…すげー簡単な話だろ」



それだけ言って、俺の横を通りすぎていく。

ちょうどすれ違ったとき、北條のジャージのポケットからヒラッと紙切れが落ちた。


本人は気づいていないようだったから、そいつが完全にいなくなったあとに俺は拾った。



「───…」



それは借り人競争で引いたくじ。

ふざけて書いたのは体育委員の北條で、のわりに自分は借りられなくて失格で。


その本当の理由を分かってしまった俺は、紙切れをぐしゃっと握りしめた。