『こうして青石さんがずっと手を繋いでいてくれれば…、俺はそれでいい』
『俺のこと───…嫌わないで、ほしい、』
『俺、増悪がない世界に行きたいんだ。どんなことも、誰のことも…恨まなくていいような』
『そこはきっと、ふたりだけの世界。…俺と李衣だけの世界だから』
本心、だったんでしょう?
あれは紛れもなく、君が私に一瞬でも見せてくれた弱さと夢。
『あのっ、えっと、王様ゲームに期限とかって…、あるのかな…?』
『…たぶん』
『えっ、あるの…!?い、いつ…?』
『…いつだろ。夢が覚めたとき…かな』
『ゆめ…?』
バカだね。
なんて馬鹿なんだろうね私は。
その夢を見ているのは私じゃなく、彼だったのだと。
『…うん。俺も覚めて欲しくない』
でもね千隼くん。
千隼くんも馬鹿だよ。
これは夢じゃない、現実なんだよ千隼くん。
私たちは現実で、この世界で、一緒に手を繋ぐことができていたの。
「───…、」
やっとロック解除できた待ち受け画面には、緊張しながらも笑顔をつくる私の隣で、穏やかに微笑んでいる男の子。
文化祭、イルミネーション、プリクラにパンケーキ屋さん。
君はこんなにも優しい顔をしていたんだ。



