ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





「そういやスマホどこやったかな…。李衣、お父さんのスマホ知らないか?」


「ベッドの上とかじゃない?お父さんいつもポンッて置いちゃうから!」


「あー、確かにな」



寝室へと向かっていったお父さんに感謝して、私は再び夢中になってスマートフォンへ目を落とす。


ちがう、そんなはずない。
だって彼はちゃんと話すことができている。

動くことができている、歩くこともできているのだから。



《最初はよく躓いてしまったんです。それから転ぶことも増えて。
軽い段差に躓いたり、なにもない場所で転倒してしまったり…、おかしいな?って不安を感じていたんです》



ポトンッ───、

私の手からスルッと落下したスマートフォンは足元、カーペットのうえ。



《それが初期症状ということですか?》


《はい、本当に最初の違和感のようなものです。それでもこの子は…いつも笑顔で過ごしていました》


《その頃から誰よりも強い女の子だったんですね》



流れるままに視線を移したテレビ画面には、インタビューを投げかける記者と、質問に答える母親らしき女性。

その先のベッド、仰向けで横になっている女の子がいた。