「…っ、でも王様の命令だから……、それは従わなくちゃだから…っ」



千隼くん、お日さまが出ている今日に外を選んでしまったのは失敗だったと思う。


うつむいた私には、前にある影がほんの少しだけ動いたように見えた。

微かに一瞬だけ、私のほうへ手を伸ばしかけていたこと。



「…じゃあそういうことだから」


「ち、千隼くん…!」


「俺はもう青石さんの彼氏じゃない」



名前で呼ぶなと、それだけ伝えて背中を向けていった。


ガクンっと、腰が砕ける。

ペタリと座り込んで、休み時間終わりのチャイムすら耳の奥深く、遠く遠くに聞こえて。



「なに、どーいうこと…?李衣あんた生きてる…!?こんなとこで何してんの!?」


「……壁になりたい、空気になりたい、もう同化したい溶けたい一体化したい、酸素と窒素、二酸化炭素に水素、…むり」


「なに言ってんの…?それに休み時間から放課後まで授業サボるって…何事なのよ!てか顔ヤバッ」


「ホラーでしょ…?こんな顔で教室行ったらびっくりでしょ…?」



みんなに気をつかってあげたんだよ私は。

だからこうしてずっとずっと校舎裏に座りこんでたの。


放課後になってやっと私からの返事を受信した楓花は、すぐに向かってきた。



「もしかしておまえ浅倉に振られたか青石!」


「………」