もう日が落ちていたのと、彼が私を隠すように前に立ったことで、はっきりとは見えなかった。



「俺もう高校生だから。寄り道だってしたいよ」


「そういう問題じゃないでしょ…!!とくに最近はいつも誰と何してるか話さないしっ、
前だってリハビリとか言って本当は遅くまで遊んでいたんでしょう!!」



リハビリ……?

どうしてこうも私の胸を強く強く不気味に叩いてくるのだろう、彼女からの言葉は。



「あなたは普通じゃないんだからっ!!」


「普通…だよ、普通でいたいんだよ」


「いいから帰るわよ…っ!!」



───普通で、いたい。


まるで心の奥から振り絞ったような声を聞いて、思わず私は引き留めるつもりで彼の学ランの袖を掴んでしまっていた。



「…李衣、」



帰らなくていいよ。

帰りたくないなら私も一緒にいるから、もう少しだけ居よう…?

さっきそう言ってたもんね、千隼くん。



「りい…、」



そうして私の名前をつぶやく女性の声もまた、どこかで聞き覚えがあった。



「じゅ、18時半まで…一緒に居ちゃだめですか…?私ももう少しだけ千隼くんと一緒にいたいです…!」



イルミネーションのとき。

たぶんあの日、彼の門限は18時だったの。