「じゃあこれで最後ね。私もどうしようか迷ったけど、ここまできたら一応聞いてみるか。───浅倉(あさくら)はどう?」
まるで最後の砦(とりで)。
お待たせしましたっ、と言うように楓花は女子を代表して注目させた。
そんな本人さんは今もイヤホンを耳にはめて、窓際の席でグラウンドを眺めながら静かにお弁当を広げている。
「いろいろ難しそうだけどルックスは文句ナシのイケメンじゃん。一応このクラスイチ」
「………」
「お、これは反応アリか?」
「…浅倉くんは……芸能人」
ぽつりとつぶやいた私の視線は、彼のサラサラと揺れるストレートな黒髪へと。
なんていうか、彼を見ることはつまりテレビのなかの俳優さんを見ている感覚だ。
口数も少ないから愛想が乏しく見えるのに、悪気は感じなくて、どこか話してみたいオーラがあって。
でもみんな勇気が出なくて話しかけられなくて、彼には彼の世界があるんだろうなって納得してしまうような。



