私が走り出して数分。
壁にぴったりと背中を合わせる。
ここは廃墟となった工場。
大きく頑丈でしめられている扉に近づいても、何も聞こえない。
でも、彼らの話の内容は筒抜け。
『——チッ。聞き出そうと思ってたのにな、』
『失敗した。あいつのせいだ』
『あの女もなかなか話してくんないしな』
『“群星”の情報が、どうしても必要なのに......』
『ていうか、あいつ誰だ。邪魔してきたやつ』
『水色の髪で水色の瞳だった』
『たしか、最近............ここらへんで、悪い奴をつぶしている奴がいるって聞いたぞ』
『ああ。で、なんか諭されるんだよな』
『でも俺らは悪いことしてねーよな?』
『どうしても情報が必要なだけだし......』
『で、そいつの名前は?』
『邪魔してきた、あの女の名前は、たしか——』
私は、すぐそこにあった小さな窓から工場内に入っていた。
......詰めが甘いよ。
私の名前を男の一人が告げようとしたところで、私はわざと物陰に隠れて足音を立てる。
すると、その音に気付いたのか男たちが声を上げた。
「誰だ⁉」

