そんなことを思いながら教室に入る。

 すると、ピシャリとドアが閉まった。

 え⁉

 ドアから飛び退る。

 ............何⁉

 神経を研ぎ澄ませる。

 人の、気配............。

 私は、はっと目を見開いた。

 ............この、気配は......。

 警戒姿勢(けいかいしせい)をとると、窓のほうから声がした。



「何してるの? そんなにかしこまらないで~」



 ......来夢..................。

 

「陽詩たちは? 先帰ったんだ?」



 尋ねると、「うん」と来夢がうなずいた。

 

「先帰ってもらった。ちょっと心空に話があってさ」

「なに............?」

「違うよ。軽い話だってば。まあ、おれらにとっては............だけどね」



 来夢がそう言った。

 『まあ、おれらにとっては............だけどね』

 ってことは。

 私たちだけに通じる話。

 私たちだけしか、軽く話せない。

 いや、話してはいけないハナシ。



「心空は、もう、わかるよね?」



 来夢がそう尋ねてきて、私は返事をするでもなく、うなずくでもなく、ただ視線を下げた。

 下げちゃだめだ。

 そう思って、顔を上げる。

 これは、とても大事なこと。

 私たちの過去。

 知られてはいけない、——秘密。

 それを言おうとしてるなら、私も向き合うべきだ。