「嫌いだったら、憎かったら、殺したかったら、そう思っててもいいけど。

 ......でも、いつか。いつかは............その相手のこと、許してあげてね。

 そういうのは、やった人が、憎まれるようなことをした人が、一番苦しいから」



 嫌われて。憎まれて。取り返しのつかないことして。誰からも恨まれる人が。

 気づかれずに、分かってもらえずに、生きていくのは............とても哀しいことだから。

 そう言って、彼女は笑った。

 はっ、と息をのむ。

 なんで、そんな............こと......許せるわけないだろ。



「大空、翼皐。............また後でね」



 そう思うのに、なぜかさっきと同じようには思えなかった。

 からり。

 そんなドアの音を上げて、空き教室を出て行った奇打。

 ——......いや、心空。

 

「なぁ、どうする?」

「あぁ......、もちろん」



 さーを見ると、こくりとうなずかれた。

 さすが俺ら。

 考えてることまで全く一緒?

 ............いや、違うな。

 心空が、違うって言ってくれた。

 まったく、同じじゃないって......言ってくれた。

 俺らは、似てるだけで、それぞれ違う人間。

 それだけで、もう十分だった。

 

「「心空............俺らのにしよう」」



 俺らに笑いかけてくれて。

 俺らに助太刀を出してくれて。

 俺らの、精いっぱいの無理を見抜いてくれて。

 俺らのことをわかってくれて。

 俺らのことを、俺らそれぞれを、見つけてくれて。