「......初めて」



 真剣な声に、顔を上げる。

 目が、吸い取られるように奇打から離れなくなる。

 どんな顔してんだよ、こいつは......っ。



「初めて、本音を言ってくれたね。初めて、本当の二人を見せてくれたね。............ありがとう」



 奇打は、笑っていた。

 いつもの、ふわりとした花が咲くような笑みを浮かべていた。

 その笑みの中に、どうしようもないほどのやさしさが混じっている。

 こっちが、奇打を殺してしまいたいと思っている俺らが、悲しくなってしまうような............深すぎるやさしさを笑みの中に入れていた。

 戦うなんて、殺したいなんて、苦しめたいなんて。

 そんな汚い感情を、すべて優しい気持ちに変えてしまうような。

 

「そっか、苦しかったんだね。ごめんね」



 奇打が言った。

 何もわかってあげられなくて、ごめんね。

 

「言いたくないことは、言わなくていい。

 言えないことも、言わなくていい。

 ............そう割り切れたら。そう思えたら、楽だったよね」



 今度は、奇打が悲しい笑みを浮かべる。

 こっちまで、苦しくなるような、深い悲しみを。