くすんだ薄い紫色のような、紫色に近いパステルライラックの瞳。
日焼けなんてしていない白い肌。
きれいに並べられた顔のパーツ。
とてもかわいくて、思わず見入ってしまう。
「......き、聞こえてる? ごめんね、寝てたのに。そんなに怖かった?」
少し遠慮がちに聞いてくる少女。
鈴が鳴るようなきれいでかわいい声に、はっと我に帰った。
「ううん、起こしてくれてありがとう。少しびっくりしたけど、大丈夫だよ」
心配そうに、目の前で立ってこっちをのぞき込んでくる少女を安心させるように返事をした。
氷雨が怒るって聞いてびっくりしたけど............怖くはなかった。
起こされて怒ってるわけじゃない。
むしろ......起こしてくれて、ありがとうって言いたいくらい。
あのまま起こしてくれてなかったら......本当に、HRも寝たままだったと思うから。
「起こしてくれてありがとう。あのままだったら、ほんとにHRも寝たままだったと思う」
「え......っ、いや、そんな......」
お礼を言う。
すると少女は照れたように、何もすごいことしてないよ、という風に頬を少し赤らめてそう言った。
少女は、さっと話題を変える。
「こ、ここにかえたんだね」
「え?」
ここに変えたって、何を?
わからなくて、ポカンとしながら問い返す。
「ほら、昨日の朝。神楽くんに、席を変えるまではこの席にいてもいいですか、って聞いてたよね?
席、ここになったんだなあって」
昨日の朝......。
神楽くんにお願いしたこと、だよね?
「......あっ、うん。そうなの」
そういえば言ってなかったな、と思いながら少女に言う。
今日の朝、用意したから......。
「わっ、そうなんだ! 2班へようこそ」
少女がニコニコと嬉しそうに言い、少女の笑顔を見て私もうれしくなる。
歓迎、してくれてるんだ......。
口調と少女の表情からそう読み取り、私もついにこにこしてしまう。
「ありがとー。ねえ、名前なんて言うの? 私は奇打 心空っていうんだけど」
自分の名前――偽名だけど――を言い、そのあとに昨日の自己紹介で言ったことを思い出す。
「あっ、昨日言ったよね」
「うん、知ってるよっ。わたしは、河永遠 陽詩っていうの。よろしくね」
河永遠、陽詩......。
かわいくて、にこにこと明るく話しかけてきてくれた女の子。
ぴったりの名前だなあ............。
「あ、のさっ。奇打さんのこと、名前で呼んでもいい......っ?」
河永遠さんが緊張した声で言ってきて、思わず目を開いた。
な、にこの子......。
かわいいっ......。
きゅんとしてしまった。
名前......。
う、うれしい............っ。
「もっ、もちろんっ。私も名前で呼ぶねっ。陽詩、よろしくね」
「ありがとう......! 心空、よろしくねっ」

