この星に生まれた、何よりも誰よりも。


 ............そ、っか......。

 氷雨の言葉に、胸が温かくなった。

 そう言ってくれて、うれしい。うれしいけど、違う。

 私は、優しくなんてない。

 だって、あの時、何もできなかった私だから。

 ただずっと、守られているだけの私だから。



「んん-。......7年?」



 少し冗談を交えて返事をする。



「そうだ」



 うなずいた氷雨。

 この気持ちを、私がこう思ってるってことを知られたくなくて、私は唇の端を持ち上げた。



「ってか、覚えてるんだね。忘れてるかと思ってた」

「氷空こそ忘れてるかと思った」

「そこまで記憶力悪くないって!」



 失礼なことを言う氷雨に反撃すると、「そだよな、じょーだんだって」と返される。

 ああ、だめだ。

 泣いてしまう。みっともなく、涙を見せてしまう。

 見せたくない。
 
 弱いところを知られたくない。

 氷雨と時雨は、あの時のくそな私を助けてくれた優しい人たちだ。

 優しいからこそ、優しいって知ってるからこそ、弱くて何もできない私を受け止めてくれるって、わかる。

 だから、いやだ。

 涙なんて、見せない。

 

「じゃ、俺仕事あっから。またな」



 氷雨はうつむき気味になっていた私の頭にポン、と手をのせてそのまま去っていった。