私が入った後ろのドアの反対。
教室の前のほうのドアから、何かを動かしているような物音がした。
机といすを抱えて、入ってきた氷雨。
机といすをがたがたと言わせながら、こっちへ向かってくる。
「おっはよ。ごくろーさまでーすっ。私も手伝うよ」
挨拶をすると、氷雨は後ろへ飛び退った。
..................へっ?
思わず、目が点になる。
いま私は間抜けな顔をしてるだろうと思った。
「......ひ、ひさめ? そんなことされると、ショックなんですけど............」
まさかそんなに驚かれるとは思ってなかった。
「っそ、そそそそそ氷空っ? はよーす、びびびびっくりすっからやめろよな......」
頬を引きつらせてそう告げた氷雨。
............そんなに?
「てゆーか手伝う。机持ってくよ」
「あ、あああ......?」
びっくりした余韻がまだ残っているのか、目を少しくるくるさせていっている。
「............はっ!」
復活した氷雨に、笑顔を向けた。
「ありがと、ほんとに今日やってくれたんだね。ありがとう」
これで、彼――星......じゃないや、神楽くんとの約束が守られた......っ。
これで、8班の人たち............神楽くんと、来夢と、琉宇と、時円の平和が、守られた......!
ぱっぱらぱーっ!と効果音が鳴りそう。
ゲームの中に出てくる勇者が、ラスボスを倒したときみたいに............。
「いや、女嫌いのやつがいるんだろ?」
「え......」
「星か」
サラリとそういう氷雨に、あっけにとられる。
............なんで、知って......?
「俺らが、お前の頼みを実行するのは、氷空が優しいからだよ。一体俺らが何年、氷空のそばにいるって思ってんだよ」

