とたんに、下げかけていた視線を上のほうへ上げた。

 ............え......!

 いいの⁉ いいの⁉

 半信半疑のまま、こう答えていた。



「マンション! 〇〇地区と、□□地区の境目にあるとこ!」



 私の住んでるマンションは、20階まであってさっき言ったとおり、地区の境目にある。

 私が住んでいるのは、13階でとても見晴らしがいいんだ。

 見晴らしがいいていうか、景色がきれいなの。




「んじゃ、いっくぞ!」



 氷雨がそう言って、私は目を見開いた。

 え......!

 ホントに⁉

 うれしくてうれしくて、ぴょんっと飛び上がってしまいそうになる。

 職員室を出て、氷雨と時雨と門のほうにむかって歩く。

 門を出てるか出てないかすれすれのところで、少し離れたところにいる時雨に氷雨と声をかけた。



「おい、時雨ー‼」

「時雨、一緒に帰ろうっ!」

「ああ、今行くーっ!」



 返事をして時雨は薄くふっ、と笑って私たちのほうに駆け足できた。

 悩み事が解決したのか、解決策を思いついたのか、考え事をしてたのか............、時雨はさわやかなさっぱりとした笑顔を顔に浮かべている。

 うーん......。

 追及はしないでおいた。

 聞かれたくないし、思い出したりしたくないことかもしれない。

 言いたくなかったら、言わないでいい。

 なんて考えられてたら、よかったのかなあ。

 そう思っていて、そういうことは私は言わないんだ。

 嘘つきになっちゃう。

 つくことは誰だってあると思うけど、余計な嘘は言いたくないし、思ってもいないことを言われるのはもっとやだ。