氷雨がついにきれた。



「時雨え‼ まだ氷空がいるっつってんだろおおお⁉」



 ......うっ。

 

「っは⁉」



 うとうとしていてそのまま寝てしまいそうだった時雨が、こちら......私のほうを凝視する。

 ああ......。

 時雨の、安らかな眠りが............。

 なーんて、コント――一人だけど――をやってる場合じゃない。

 叫んでハアハアしている氷雨とこっちを凝視してる時雨に、申し訳ないという気持ちが大きくなった。

 私が浮かれてたから......。

 氷雨と時雨に、こんな............迷惑かけて......。



「ほんっと、ごめん。時雨、ごめんね......」



 氷雨も時雨も、今日疲れてそうだったのに............。

 時雨なんて、この場で、立ったまま寝ちゃいそうで......。

 氷雨もきっと私が気付きづらいだけで......すごく、疲れてると思う。

 なのに、それなのに、......私が残ってたから......。



「ほんと、ごめ......」

「いやいや、なんでまだいんの⁉ なんかあったんか?」



 二回目の謝罪の声は、時雨によって遮られた。

 この理由、言うのちょっと恥ずかしいけど............。

 でも、ここまで迷惑かけたら、正直にもういってしまおう......。



「ほら、いるだろ‼ 俺の話も聞けよな!」



 なぜかどや顔でそういう氷雨。

 時雨はむかつく―!という顔をした後、氷雨と同じくらいの声量でこう言った。



「そのこと先に言えよ!」

「だってお前が遮るだろ‼ 言おうとしてたんだよ!」



 ............氷雨。

 それ、私が理由を言おうとしたら遮った君が言う言葉じゃあないと思うけどな。



「ごめんね、ちょっと一緒に帰ろうと思って......。一緒に学校だからさ、ちょっと浮かれてた。ほんっとごめんなさい......」

「ってか、家どこよ。一緒に帰んぞ!」



 明るい声で、そういった氷雨。