(ひかり)、」



 名前を呼ぶ。

 肩に、ひんやりとしたものが触れた。

 泣いてる......?

 どうして......。



「氷空......いき、てる............ここに、いる」

「っうん、うん......」



 私はその言葉にうなずいた。

 生きてる。
 ここにいる。

 死んでなんか、いないよ。
 いなくなってなんか、ないよ。

 約束、ちゃんと守ったでしょ?

 守ったんだよ。

 あの世界の朝の景色、とってもきれいなんだってさ。

 見たかったけど、頑張って戻ってきたんだよ。

 

「星、も......約束、守ってくれたんだよね」

「......ああ、もちろん」



 もちろん。

 当たり前だ、と言われたようでうれしくなる。



「私、ちゃんと星の声、聞こえてたよ。......あの時の続き、言ってよ」

「あの、とき......?」

「病院で、言いかけてた言葉の続き。聞きたい」



 そう言えば、「......いいよ」という言葉が返ってくる。

 あれ?

 いつもより、口調が柔らかくなってる気がする。

 

「............氷空はさあ、いっつも周りで誰かいなくなるんだって、言ったよな。いつも自分のせいで、誰かがいなくなるんだって」

「......」

「............でも、それは氷空のせいじゃない。氷空の周りで、いつも誰かがいなくなるというのなら、俺は———......絶対、一緒にいる。死なねぇよ」

「......っ、」

「———俺は、氷空といて不幸だなって思ったことなんて一度もない」

「......う、っ......」




 私は耐えきれないくなって、顔をゆがめた。

 目頭が熱くなる。
 のどに、熱いものがこみ上げてくる。

 なんで、星は、本当に......っ。

 私が欲しい言葉を、言ってくれるんだろう。