無言......。

 本当に、何かがおかしい気がする。

 何か苦しいことでもあったの?

 ねえ、何か言ってよ。

 見えない。

 キミの顔が見れないの。

 

「......なんで、なんだろうな。なんで、氷空なんだろうな。なんで、氷空ばっかり、こんなことになんなきゃいけないんだろうな」



 ぽつり。

 降ってきた声。

 髪が、ふわりと持ち上げられる。



「———...すき...、だよ......」



 そして、彼は私の顔にかかった髪の毛をやさしく流した。

 ———......え......?

 その言葉に驚いたけれど。

 彼の声が、すごく、苦しそうで、辛そうで、悲しそうだったから。

 ねえ、なんで......?

 あなたが生きているってことがすごく、うれしいのに、なんでそんなに苦しそうなの?

 本当に、何かあったの?

 私じゃ、頼りないのかな。

 たくさんたくさん、キミは私を笑わせてくれたから、私も君の役に立ちたかったんだよ。

 あの時やったことは、あなたにとって、いやだったの?

 やってほしくなかったの?

 ......私、じゃ。
 頼りなかったの? 私じゃ、あなたを守れなかったの?

 ......ねぇ。

 どうして———



「......氷空」



 とっても、優しい声。

 優しくて、優しくて、その声に、泣きそうになってしまう。



「氷空ていう、その意味はさ。
 きっと、“愛”っていう意味なんだよな」



 その言葉は、お兄ちゃんに言われた言葉だ。

 『氷空って、言うのは。氷空っていう、その意味は...“_愛_”———......』

 氷空っていうのは、その意味は。“愛”だと思う、って。

 君が言った。

 氷空(あい)。 
 
 きっと、そうだね。
 .....なんて、本当は分かんないや。

 でも、キミがそう言ってくれるのなら、本当だって思ってみても、いいのかもしれないね。