光に飛び込むと、あたりが一層強く光った。

 そして、何やら固い感触が背中にある。

 私は、ベッドに寝かされているみたい。

 そして、声がしていた。

 かすかな息遣い。小さな声。

 カーテンが揺れているみたいで、風が吹いてくる。

 見えてなくても、感じる。

 月の光が、淡く揺らめいているのが分かった。

 

氷空(そら)、」



 私の名前が呼ばれる。

 切なさそうな声だった。

 その声に、ぎゅっと胸が締め付けられる。

 その声、知ってる。

 知ってるよ。

 だって、君はいつもその声で私を連れ戻してくれたから。

 ............一体、どんな顔をしているんだろう。

 その声が聞こえて早々にこんなことを思うなんて、私も結構この世にご執心だったみたいだなあ。

 こんな様子じゃ、そりゃあ追い返されちゃうよね。

 

「なあ、氷空、花、好きか?」



 ......お花?

 好きだよ。基本、全部のお花、好きだよ。



「今日は、もってきてないけどな、昨日持ってきたんだ。まだ綺麗に咲いてるぞ」



 ほんと?

 そうだったら、見てみたいな。

 あなたが、もってきてくれた花、どんなのかなあ。



「ていうか、今咲いてる花に合ういそうなやつ、また持ってきたんだよ」



 ......?

 何やらカサコソという音がした。

 かたり、と音がする。

 

「ピンクと白のポーチュラカ。この間持ってきた花は、青ばかりだったから、アクセントにと思って」



 そうなの?

 青色が好きなのかな?

 瞳の色も群青だし、綺麗な髪も青色がかかっている。

 そう言えば、キミは、青色が多い気がするなあ。



「それに、ポーチュラカは、9月26日の誕生花だろ」



 覚えててくれてたんだね、私の誕生日。

 なんだかうれしくなっちゃう。

 でも、なんだか彼は無言になってしまった。

 何かあったのかな?

 どうしたんだろう。