「......あーあ。つまんねーなぁ......」
思わずそうぼやく。
つまらない、つまらない、つまらない。
前まではずっと、そう思っていた。
———氷空に、出会うまでは。
バカみたいな毎日だった。
利用されて、狙ってきて、嘘ついてるやつばっかりで、みんなして仮面をつけて、お世辞を並べ立てて。
本当にバカみたいだった、と自嘲する。
それが気持ち悪かった。胸糞悪い、とそう思った。
だから、俺はなったのだ。
人間不信、人間嫌い。
そうすれば、人間の黒い部分ばかりが見える。
真っ黒だ。
そう思って、あざけわらった。心の中で。
利用して、利用されて。嘘ついて。仮面をつけて、本心を悟られないようにして。お世辞を並べ立てて。
だからきっと、気づかなかったんだよな。
———みんな、何かに縛られながら、生きているということに。
気づかなかった。分からなかった。なにも、感じなかった。
知らなかった。
こんなに、仮面をつけて本心を隠すのには、悲しい理由があるという場合もあること。
必死に隠して隠して隠し続けて、何を思っていたんだろう。
仮面をつけて、本心を隠して、そのうえで笑うことは、どれだけ苦しかっただろう。
......それも、仮面をつけるということなのか。
嘘つき。
氷空は、仮面をつけて、本心を隠していたが、そんなものではなかった。
綺麗すぎる人間だ。
嘘つきなんかじゃないし、必要な嘘はつかない。そもそもの話、自分から嘘は言わないし。
悪、なんてものを知らないくらいとてつもなく綺麗に見えて。
なのに、この世のはかなさというものを知っている。
本当に、............バカみたいだ、
何度も何度も、心の中でつぶやく。
理不尽だ。不平等だ。
なんで、氷空なんだよ。なんであいつばっかりが、苦しまなきゃいけねえんだよ?
もう正解なんて何かわからない。
一体、何がいいのかなんてわからない。
不平等だ。理不尽だ。
分かるのは、ただ、それだけ。

