「時雨え‼ まだ氷空がいるっつってんだろおおお⁉」



 ............はっ。

 急に頭が働きだした。

 今、こいつ...... “まだ氷空がいる”......って............。

 一気に意識が覚醒(かくせい)する。

 いや、でも、もうとっくのとうに帰ってる、は......ず......?



「ほんっと、ごめん。時雨、ごめんね......」



 目を開いて、氷雨の方向を見るとそこには氷空がいた。

 申し訳ないと思っているのが伝わってくるような、しんみりした声が俺に謝罪する。

 いやいやいや、なんだってまだこんなところに......⁉

 

「ほんと、ごめ......」

「いやいや、なんでまだいんの⁉ なんかあったんかっ?」



 謝罪する声を遮り、素朴な疑問をぶつける。

 

「ほら、いるだろ‼ 俺の話も聞けよな!」



 氷空じゃなく、氷雨の勝ち誇ったような声が聞こえてきた。

 ............むかっ。

 うん、知ってるよ、氷空がいたことを氷雨が伝えようとしてたことは‼

 でも、氷空がいるって先に言ってくれてればな、俺はちゃんと最初からしっかりきっかり話聞いたっての‼



「そのこと先に言えよ!」

「だってお前が遮るだろ‼ 言おうとしてたんだよ!」



 氷雨から正論が返ってくる。

 ..................う。

 そのことに関しては、反論の余地もない。

 実際、早く帰って寝たくて、そのこと氷雨に言ってたしな......。