扉を開けると、そこには氷空がいた。

 閉められた窓から日の光が差し込み、陶器のような白い肌に、まつげの影がくっきりと映っている。

 ベッドに横たわっている氷空に、そっと告げる。



「今日も来たから、」



 白い花瓶を取り出した。

 シンプルな白い花瓶に、持ってきた花を生ける。

 シオン、アネモネ、ブルーローズ。

 白い花瓶に、この花たちは、我ながら、きれいに引き立っていると思った。

 サイズもいい感じじゃないかと思う。

 

「そーらーあーっ! 今日も来たぜー!」

「うるさい」

「氷空、今日はねー、招待状を持ってきたの―」

「うんうん! 約束持ってきたんだよ~!」



 ワイワイごちゃごちゃ言いながら入ってきたのは、学校でも騒いでいたやつら。

 ............なんなんだよ、こいつらは。

 静かにするってことができないのか?



「おーい! どこ行くんだよー⁉」

「うるさい。考えれば」

「はああああー⁉」



 相変わらずうるさい来夢。

 リイカと河永遠が、氷空に話しかける。



「今度一緒にショッピングしよー!」

「女子会もやろうよ!」


 よくわからないが、仲良くできてそうでよかった。

 氷空は、きっと仲良くなかったら気を使いそうだしな。

 あわあわしながら、けんかしてる二人をたしなめて、ぎこちなさそうに笑ってる様子がありありと浮かぶ。

 ......もうだめじゃねーか。そうなったら。

 もうその時点でおかしいだろうが。馬鹿じゃん。

 

「じゃ、またくるな、」



 もうそろそろ面会時間が終わる。

 そう言って、最後に病室をのぞけば。

 氷空は相変わらず、誰が見てもきれいだと、こぼしてしまうようなほほえみをしていて。

 どこかに、消えてなくなってしまいそうだった。