この星に生まれた、何よりも誰よりも。

 空気が凍り付いた。

 次の瞬間、一気に凍り付いた空気がとけて、私は声を上げた。



「え......、なんで?」

「氷空が」



 なぜか、お兄ちゃんは悲しそうに笑っていた。



「決めなくちゃいけないから」

「きめる......?」

「そうだよ」



 氷空は、決めなくちゃいけないから。
 だから、その景色は見られない。

 お兄ちゃんがそう言って。



「気づいたんでしょ? ここにいたい? 戻りたい?」



 気づく?

 ここにいる? もどる?

 どこに?

 分かんない。

 ......って言ってるけど、本当はもうわかってる。

 

「タイムリミットはここに光が注がれ始めるまで。それまでに、決めなきゃだめだよ」

「きめる......」



 それまでに、決める。

 もどりたいかを、ここにいたいかを。

 

「好きなほうでいいよ」



 小説の中なら、「行ってらっしゃい」って、戻らせるのが普通なんだろうけど。

 
 そう続けて、お兄ちゃんは微笑んだ。



「戻りたかったらもどればいい。ここにいたかったらそれでもいい。だから———」



 ———氷空の好きなほうに行けばいいよ。



「......っ!」



 風が吹いた。

 私の、好きなほうへ......。

 私は......。



「わた、しは......私は、私は......」



 必死に言葉を探す。

 どうすればいいかを探す。

 もどればいい?
 
 ここにいればいい?

 どうすればいいんだろう。

 どうすれば、みんなは———......。



「みんなのこととか考えないで。プライドも、みんなの気持ちも、過去も、俺たちのことだって考えないで。全部全部、今だけなかったことにして」

「......」

「氷空は、どうしたい———?」



 プライドも、過去も、お兄ちゃんのことも、みんなの気持ちも。

 全部全部、今だけ忘れて。

 自分のことだけ考えて。

 自分がこうすればみんなはいいんじゃないかとか考えないで、自分がどうしたいかだけを考えて。

 私は、どうしたい?

 ......答えなんて決まっていた。



「なんでもいいよ。俺たちじゃなくて、自分で決めて」

「......私は」

「進みたいほうに、行けばいいよ」



 正解なんてないんだから、自分が選んだ選択肢を正解にするんだ。
 氷空の、行きたいほうに行けばいい。